恩師でもありパートナーでもあり

アメリカ挑戦記

皆さんは今までにこの人に教えてもらってよかったなと思う事やこの恩師とご縁があって出会えて良かった事はあったと思います。私もいままでに沢山の方に出会い、とても多くの事を学ばさせて頂きましたがその中でもパートナー的な存在であり、引退競走馬を成長させるにはどうしていけばいいのか?という事を教えてくれた恩師アイリッシュブルーの話をしたいと思います。

アイリッシュブルーは元々マイボスヒーローという名前で5戦1勝の戦績で競走馬を引退して6歳の時に京都の練習馬として入厩しました。当時の彼は障害飛越のセンスはあるものの、引退競走馬らしく物音や対向馬に敏感で反転や急に走り出すなど会員様とスタッフが手を焼いていたのを覚えています。

そんなどうしようもない状況の時にスタッフ間で一部の担当馬の入れ替えるタイミングがあり、アイリッシュブルーをすかさずドラフト1位で指名したのを覚えています。

競技馬としてのポテンシャルが高く、障害のセンスや馬体もしっかりしていたので、次期主戦馬になるように若いうちから調教していこうという計画でした。しかし、最初は競技のトレーニングをしつつレッスンの馴致をするという事が苦戦する日々の連続でした。

障害レッスンでは走り回ってかなり大変だったので、馬場のレッスンを中心に馴致を行っていき、そこである程度大人しくなった際にベーシック(初心者)のレッスン中心に使用していきました。

まだ、乗馬を初めて間もない方は常歩中心でそれほど速歩は行わないのもあり、総合馬術の競技馬として必要な心肺トレーニングに最適だと思ったのも理由の一つです。

ただ、背中への負担はかなりあった為、塗り薬であったり、マッサージのケアは欠かせませんでした。そして、アイリッシュブルーのデビュー戦は競技場につれていけば予想通り、待機馬場では走り回っては反転、跳ねるの繰り返しでした。

いざ競技が始まれば野外の障害でことごとく止まって拒止されてデビュー戦は散々な結果となりました。また一番心配していたのは競技が終わって2、3日経っても競技モードのようなテンションが高い状態で会員様を乗せてレッスンに参加するという事でした。

しかし、普段通り大人しく初心者の方に優しい対応していました。まだ若いけど、少しづつ成長しているのは感じましたし、利口で真面目な部分に惹かれてこのまま彼と一緒に頑張ろうと思った瞬間でした。

そうこうしているうちに今までのパートナーのシーパッションが他のスタッフの担当になる為に移り、アイリッシュブルーが主戦馬となる日がきました。

デビュー戦からいくつかの競技を経験し、クロスカントリーの障害も少しずつ慣れてきてインターナショナルクラスに近い競技に出る事になりました。結果はクロスカントリーの時に連続障害の2つ目の幅が狭い障害で一つ止まってしまいましたが完走する事が出来ました。

障害飛越も0でクリアラウンドして最終的に3位となり、この日を境に人馬共に一気に成長したと思います。昔は障害レッスンに出たら走り回っていたのですが、その障害レッスンも大人しくこなし、初心者レッスンでは周りの状況を考え、初心者の方に優しく接しとても人気者になっていました。

そして、2013年に乗馬クラブクレイン栃木がOPENする為、転勤する事が決まりました。転勤の際はグレナディール選手であれば本社技術の配馬となっている為、一緒に移動する事になるのですが

当時の私はまだ強化指定選手でしたので、アイリッシュブルーと残念ながらここでお別れかと思っていました。しかし、当時の米山さんは今までの経緯を見て下さり、若馬からここまで調教した事と新規事業所は即戦力となる練習馬が必要という事もあり、特例で一緒に連れて行きなさい。

と言って頂いた事は今でも鮮明に覚えています。そうして、栃木事業所へ一緒に行くことになりました。行った先では勿論、体験乗馬から上級レッスンまでこなし、すぐに人気者となりました。

また、競技会の成績も右肩上がりになり2015年にインターナショナルクラスに参加して、外国産の乗用馬と対等に走り、見事勝つところまで成長してくれました。栃木でも変わらず彼の試合モードとレッスンモードのON,OFFスイッチがギャップを目立たせ更にファンを増やしていました。

そして、当時の2☆クラス(今の3☆クラス)まで完走するようになり、日本馬術連盟からも表彰される程の名馬となりました。彼から多くの事を学びましたが競技をするにもこのレベルが限界だと思い

大切にしてくれるオーナーさんの元へ行き、可愛がってもらいながら幸せに暮らして2024年に病気の為、逝去しました。彼は私だけの先生ではなく、初心者~上級者まで多くの方に乗馬の楽しみ

や技術の向上に貢献したと思います。今ではきっと天国でのんびりしているとは思いますがクロスカントリーで走り回るONモードか初心者の方に優しく大人しくじっとしているOFFモードなのかどちらかは分かりません(笑)

この記事を読まれた皆さんもこの機会にしばらく連絡していないお世話になった恩師や先生、相棒など連絡してみてはいかがでしょうか?きっと喜ばれる事、間違いないと思います。

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